経営者の高齢化に伴い、「事業承継」が喫緊の課題になっています。
2025年には約800万人いる団塊の世代が後期高齢者(75歳)となり、国民の4人に1人が後期高齢者となるのです。
こうした背景から、事業承継やM&Aに関するセミナーが数多く実施されています。
また、国の施策として「事業承継・引継ぎ補助金」が新設されました。
ただし、事業承継が順調に進むかといえば、残念ながらそうとは言えないでしょう。
それは「誰に継がせるか」を決めることは意外と難しいからです。
親子と言えど腹を割って話せない?
誰に事業を継いでもらうかを考えるに当たって、一般的には以下の順序で考える方が多いと思います。
①親族(ご子息)に相談
↓ それがダメなら
②従業員の中から選ぶ
↓ それがダメなら
③第三者(M&A)
ご自身で切り盛りしてきた会社であれば、ご子息を含む親族の方に継いでほしいと考えるのは当然です。
よって、M&Aは「最後の選択肢」になりがちです。
しかし、実際は最初のステップでつまづくことが多いようです。
現経営者の方からすれば、
・息子に経営を担うだけの器量があるだろうか
・プレッシャーを与えてしまわないだろうか
と、躊躇してしまうからです。
また、ご子息側もなんとなくプレッシャーを感じているでしょうし、ご両親が苦労された様子を目の当たりにしていると、事業を引継ぐことを避けたいと考えるでしょう。
こうしてお互いがなんとなく腹のさぐり合いを続けてしまい、適切なタイミングでの事業承継ができず、現経営者の方が亡くなった途端、経営が混乱するという事態が生じます。
とくに男同士というのは、親子と言えど、腹を割って話せない関係なのかもしれません。
最初からM&Aの可能性を探ってみる
発想を転換させて、ご子息に相談する前に、M&Aの可能性から検討してみると良いかもしれません。
①と③の両方の選択肢を最初から持っておくのです。
①がダメでも③がある、という状態にしておくだけで、ご子息に相談する心理的ハードルが下がるのではないでしょうか。
相談を受けるご子息にとっても、自分が継ぐ以外の選択肢があるというだけで、プレッシャーはかなり軽減されるはずです。
また、現経営者がそこまで真剣に考えていることがわかれば、ご子息に次期経営者としての自覚が芽生えるかもしれません。
自社のビジネスを見直すきっかけになる
ただし、M&Aという選択肢を持つためには、大前提として自社のビジネスがしっかり回っていることが必要です。
赤字の状態では、その事業に関心を持ってくれる企業は極めて少なくなるからです。
仮に第三者によるM&Aの可能性を探る場合、相手企業に対して自社の強みや弱み、経営課題などを伝達する必要があります。
この作業はとても労力がかかる一方で、自社のビジネスを根本から見直すきっかけにもなります。
事業承継の専門家からの助言は、とても参考になることでしょう。
結果的にM&Aを選択しなくても、M&Aの可能性を探る中で得られた知見は、今後の経営活動に活用できるのです。
最後に
石川県中小企業診断士会には、事業承継に関する専門知識を持ったコンサルタントが複数所属しています。
これまで築きあげてきた事業を納得のいく形で次世代に引継ぐためにも、まずはお気軽にお問い合わせください。