石川県中小企業診断士会は、さまざまな業種・業態の事業者の経営支援に取り組んでいます。
それぞれの事業特性や固有の事情を配慮するので、経営支援の中身は千差万別です。
一方、業績が低迷している事業者には、ある共通点があることがわかってきました。
それは「数値分析をしていない」ことです。
数値分析をしていないことが業績低迷の根本原因と言っても過言ではありません。
どういうことか解説していきます。
分析とは「分けて・考える」ことである
ある金属加工メーカーの事例です。
売上が低迷しているので、抜本的な対策を指南して欲しいとの依頼でした。
決算書を見ると、たしかに売上は減少傾向にあり、赤字に転落しています。
訪問したコンサルタントは、売上低迷の原因を探るため、受注件数および受注単価の推移を確認しようとしたところ、そうした数値データがないというのです。
社長は売上伝票を顧問税理士に送付するだけで、何の分析もしていませんでした。
決算書だけを見て「売上が減った」「赤字になった」と右往左往していたのです。
よくよく考えれば当たり前のことなのですが、売上とはいくつかの数値の集合体です。
代表例は「顧客数✖️単価✖️購入頻度」です。
このほかにも、
「A事業 / B事業 / C事業」と事業ごとの数値を把握する方法
「Aエリア / Bエリア / Cエリア」と地域ごとの数値を把握する方法
など、さまざまな切り口があります。
売上は各要素を積み上げたものであり、各要素の変動によって売上の増減が決まります。
売上の構成要素を明確に把握しておかない限り、具体的な対策を検討することはできないのです。
要素を分解することで優先課題が明確になる
今回の事例では、受注件数および受注単価を調べるには時間がかかるとのことだったので、代わりに事業ごとの売上推移を集計していただきました。
すると、保守・メンテナンスの売上が急減していることが判明したのです。
詳しく話を聞くと、保守・メンテナンスは、顧客からの依頼があったときにしか対応しておらず、受注のブレが激しいとのことでした。
社長は、どうやって新規顧客を獲得するかを考えていたようですが、実は既存顧客へのフォローが優先課題だったことに気づきます。
さっそく社長は定期検査サービスを立ち上げ、現場設備の稼働状況などを詳しくチェックし、部品交換や新しい設備への取り替えを提案したところ、安定的に受注を獲得できるようになりました。
現場に足を運ぶことによって、さまざまな要望を聞くことができるようになったことから、新たなビジネスに繋げようと積極的に活動されています。
物事を小さく分けて1点に集中すると打開策が見えてくる
「分析」という言葉を聞くと、高度な計算をしなくてはならないのかと勘違いされる方が多いです。
しかし、先ほどの事例で紹介したように、高度な計算など一切不要です。
売上の構成要素を事業特性に応じて分解し、その推移を注意深く見ていくうちに、何をしなければならないかがわかるようになります。
経営における問題点はいくつもあるのが通常で、それらは密接に絡み合っているものです。
ある問題点を解決するための施策が、いつの間にか他の問題点にも波及して全体的に経営状況が好転することも決して珍しくありません。
経営改善の第1ステップは「現状把握」であり、数値を分析することから始まります。
売上を分解し、施策の優先順位を決めたならば、まずはその施策をやり切りましょう。
そのうえで、さらなる専門的アドバイスが必要でしたら、当会に所属するコンサルタントをぜひご活用ください。