「リスキリング」という言葉を耳にすることが増えています。
きっかけは、2022年10月、岸田首相の「リスキリングの支援に5年で1兆円を投じる」という所信表明です。
2022年末の新語・流行語大賞の候補になるなど、一躍注目を集めました。
リスキリングとは、新しい技能や能力を身につけて、職場や市場で必要とされるスキルを獲得する取り組みのことです。
昨今の技術革新やビジネスモデルの変化に対応するためには、欠かせないスキルと言えるでしょう。
リスキリングの取り組みを加速させるべく、国も本格的に支援し始めています。
それが、厚生労働省の「人材開発支援助成金~事業展開等リスキリング支援コース~」です。
<厚生労働省「人材開発支援助成金」制度について>
今回は制度概要を紹介するとともに、リスキリング時代における人材育成において留意すべきポイントついて解説します。
基本要件
目的は、新規事業の立ち上げなどの事業展開等に伴い、新たな分野で必要となる知識及び技能を習得させるための訓練を実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成するものです。
下記の基本要件に該当する「訓練」の経費と受講者の賃金について助成金が支給されます。
- OFF-JT (企業の事業活動と区別して行われる訓練)により実施される訓練であること
- 実訓練時間数が10時間以上であること
- 次の① または ②のいずれか に当てはまる訓練であること
① 事業展開を行うにあたり、新たな分野で必要となる専門的な知識及び技能の習得をさせるための訓練
② 事業展開は行わないが、事業主において企業内のデジタル・デジタルトランスフォーメーション(DX)化や
グリーン・カーボンニュートラル化を進める場合にこれに関連する業務に従事させる上で必要となる
専門的な知識及び技能の習得をさせるための訓練
助成率と助成額・支給限度額(中小企業の場合)
- 経費助成(講師への謝金や訓練の受講料等の訓練の経費):75%
支給限度額
10時間以上100時間未満:30万円
100時間以上200時間未満:40万円
200時間以上:50万円
- 賃金助成(1人1時間当たり):960円
支給限度額
1,200時間。ただし、専門実践教育訓練については1,600時間
手続きの流れ
① 職業能力開発推進者の選任・事業内職業能力開発計画の策定
② 訓練開始の1か月前までに「訓練実施計画届」を作成し各都道府県労働局に提出
③「事業内訓練を実施」または「事業外訓練を受講」
④ 訓練終了日の翌日から起算して2か月以内に「支給申請書」を各都道府県労働局に提出
従業員がスキルを発揮できる環境を整備することが重要
以上が、リスキリングの取り組みを支援するための助成金の概要ですが、これ以外にも人材開発を支援する助成制度は複数あります。
人材育成に注力したいが費用面で難しいと考えている事業者にとっては、検討の価値がありそうです。
しかし、注意しなければいけないのは、何のため人材開発であるかをしっかり見極めることです。
ありがちな失敗として、従業員が身につけた新しい知識やスキルが宝の持ち腐れになってしまうケースがあります。
従業員が新しい知識やスキルに基づいた提案をしても、上司や経営者の理解が乏しいために採用してもらえず、かえって従業員のモチベーションが低下する事例が多発しています。
どんなに魅力的な助成制度を利用しても、人材育成を成功させるための計画や社内文化の醸成がなければ、本来の目的を果たすことは難しいでしょう。
昨今のリスキリングブームに踊らされることなく、自社の経営方針と人材育成を連動させていくことが重要なのです。
当会に所属するコンサルタントの中には、社会保険労務士といった「ヒト」に関する課題を解決できる専門家が複数在籍しています。
今回紹介した助成制度を有効活用し、自社の経営戦略に沿った人材育成を進めたい事業者の方は、ぜひ当会にお問い合わせください。