石川県産業創出支援機構より、「DX(デジタル化)設備導入支援事業」の募集が開始されました。
目的は、DX(デジタル化)を通じた競争優位の確立や経営戦略上の課題解決に向けて、県内中小企業者等の継続的なデジタル投資を重点的に後押しすることです。
「個別枠」「連携枠」「FS調査枠」という3つの申請枠が設けられていますが、今回は「個別枠」を中心に制度概要を解説します。
<「石川県DX(デジタル化)設備導入補助金」の詳細はこちら>
https://www.isico.or.jp/support/dgnet/d41170252.html
「個別枠」の概要
対象は、競争優位の確立や経営戦略上の課題解決(コストダウンや差別化)につながる継続的なデジタル投資の一環となる、会社全体や部門内の最適化に資するデジタル技術を活用した「情報システム」を導入する事業です。
単に、デジタル機器を従業員に配布する、ホームページやECサイトを構築する、などは対象外です。
補助率
補助対象経費の1/2以内
賃上げ要件を満たすか、小規模事業者に該当する場合は2/3以内
補助限度額
下限:2,000千円 上限:6,000千円
下限が設けられている点に注目です。
競争優位の確立や経営戦略上の課題解決のためには全社的な変革が必要ですから、それにふさわしい規模の投資が求められています。
申請要件に留意が必要
申請要件として
「国の補助金(IT導入補助金、ものづくり補助金等)の活用が困難なこと」
と定められており、国の補助金が明らかに活用可能な場合は申請対象外です。
国の補助金の活用が困難とは、以下の状況を指します。
(1)IT導入補助金に申請できない理由 【いずれかに該当することが必須】
- IT導入補助金の対象ツールに最適なものが存在しないため
- IT導入補助金の対象要件を満たせないため(上記以外)
- IT導入補助金では事業規模(事業費)が合致しないため
- その他IT導入補助金へ申請ができない理由
(2)ものづくり補助金に申請できない理由 【いずれかに該当することが必須】
- 賃上げ要件(地域別最低賃金・付加価値額向上の要件を含む)の達成が困難なため
- ものづくり補助金の対象要件を満たせないため(上記以外)
- その他ものづくり補助金へ申請ができない理由
以上の要件は、「2023年度 DX(デジタル化)設備導入支援事業(個別枠)への推薦依頼書」に記載されています。
個別枠を申請するためには商工会・商工会議所等からの推薦を受ける必要があり、推進依頼書はその推薦をもらうための依頼書です。
国の補助金を活用できない理由を、事前に商工会・商工会議所等に説明し、承諾を得る必要があります。
IT導入補助金、ものづくり補助金の募集要領を精査したうえで、個別枠の申請要件を満たすかどうか検討しましょう。
「みらデジ経営チェック」で経営課題を明確にする
個別枠の特徴として、「みらデジ経営チェック」を実施していることが要件となっています。
中小企業庁が実施している経営診断ツールで、設問に答えると経営課題やデジタル化への取り組み状況を把握できるほか、同一地域内の同業他社との比較もできます。
簡単な質問項目のみで診断するので、診断結果は詳細なものではなく、あくまで「傾向」を示したものと捉えるほうが良いでしょう。
DXに取り組みたいけど何から取り組んでよいかわからない事業者にとっては、よい指針になると思われます。
ここで考えていただきたいのは、なぜ「みらデジ経営チェック」の診断結果が必要申請書類に含まれているか、ということです。
言うまでもなく、診断結果と事業計画との整合性が取れているかどうかを審査するために他なりません。
たとえば、販路開拓が経営課題との診断結果を受けたにも関わらず、事業計画では業務効率化がメインとなっていては、経営課題を踏まえた事業計画とは認められない可能性があります。
審査基準を意識した事業計画を策定できるか
事業計画書の様式はあらかじめ決められており、ダウンロードすることができます。
記入項目が多岐にわたるほか、図や写真などの添付も求められていますので相当の準備が必要です。
記入例が掲載されていますので参考すると良いでしょう。
ただし、参考にするのはあくまで書き方であって、中身ではありません。
経営課題や必要なデジタル投資は個々の事業者で異なるはずですから、内容が似たり寄ったりになるはずはなく、審査員も厳しくチェックします。
募集要領に審査基準が明記されているので、必要事項が過不足なく盛り込まれているか意識しながら計画を策定してください。
審査基準は以下の5つです。
- 事業目的の妥当性
- 課題設定の妥当性
- 解決策の妥当性及び実行力
- 費用対効果
- 本事業の目的との整合性
※各審査基準の詳細は募集要領にてご確認ください。
「連携枠」は申請ハードルが高い
「連携」という文字からわかるとおり、複数事業者が連携して「共通システム」を導入する事業が対象です。
幹事企業1者+参加企業2者以上の計3者以上の連携体であることが条件です。
他の事業者社との調整が必要という点でハードルは高いですし、採用予定件数も10件と少ないです。
複数の事業者による連携を強化する目的であれば、IT導入補助金「複数社連携IT導入類型」の活用を視野に入れたほうが良いかもしれません。
「FS調査枠」はスピード勝負
「調査」という文字からわかるとおり、デジタル技術を活用した設備導入の前段階で行う業務分析や費用対効果算出などのFS調査を行う事業が対象です。
※FS(feasibility study):実行可能性調査
具体例として
- AI・IoT・ロボット等を活用した自動生産ラインの構築検討
- 基幹システムや生産管理システムの仕様検討
- レガシーシステムの統合・刷新に向けた具体的な検討
などが挙げられています。
いずれも「事前検討に長期間を要するもの」「技術的に高度なもの」であり、設備の導入段階では「ものづくり補助金」などを利用することが想定されています。
補助対象経費には、デジタル技術を活用した機械装置やシステム等の借用経費も含まれています。
まずは試験的に運用してみて高い効果が得られると判断できる場合には、ものづくり補助金などを活用して本格導入に踏み切る、といった活用もできます。
なお、「個別枠」と同様に、綿密な事業計画の策定が必須であり、審査基準も明記されています。
調査・検討するだけだから申請は簡単だろうと高をくくってはいけません。
申請タイミングにも留意する必要があります。
募集要領によれば、予算がなくなり次第、募集は終了となります。
審査のうえ採択が決定されるため先着順ではないものの、早く申請したほうが有利であることは間違いないでしょう。
最後に
今の時代、経営課題を克服するためには「デジタル技術の活用」は避けては通れません。
経営者は経営のことのみならず、経営とデジタル技術の融合にも配慮し、適切な投資を行う必要があります。
一方、デジタル技術は高度な専門知識が求められるのみならず、絶えず新しい技術や概念が誕生するため、その動向を追いきれないのが現状でしょう。
だからこそ、経営とデジタル技術の双方に精通した専門家との連携が欠かせません。
当会にて、デジタル技術を活用した経営改善をサポートした実績があるほか、デジタル技術に関する国家資格を持った中小企業診断士が多数在籍してきます。
今回の補助事業をきっかけにDXに取り組みたい方からのご相談をお待ちしております。
本記事は公募要領に基づいて作成しておりますが、情報の正確性、信頼性、完全性を保証するものではありません。
申請の際は必ずご自身にて公募要領をご確認のうえ、ご自身の責任において申請していただくようお願い申し上げます。